いのおくんにハマったら沼地

まだ終わらないの?That's Your work 手伝わないけど

舞台「カラフト伯父さん」から1年が経つ


2015年4月25日〜5月25日公演。




(中略)



「ほんたうのさいわひ」は、いつ来るんや、カラフト伯父さん.......。

ガキのころ、あんたはおれのヒーローやった。なんでも知っとる、やさしい、頭のえぇ伯父さん.......かなしいとき、くるしいとき、いつかて駆けつけてくれる.......。

お母んが死んで、じしんがあって、隣のアパートが潰れて、大学生の兄ちゃんが柱に膝、はさまれて、必死で助けようと思たけど、火の粉がどんどん降り始めて、兄ちゃんは「もうえぇから、逃げてくれ」って.......それから、その向こうで、九つぐらいの男の子が和簞笥の下敷きになって、「お母さん、熱いよぉ」って、うめき声あげて.......あっちでも、こっちでも、うめき声やら、泣き声やらがあがって.......火の手はどんどん大きうなるばかりで.......「もう行け、もう行け」「はよ逃げてくれ、はよ逃げてくれ」.......あっちでも、こっちでも、そんな叫び声があがって.......火の手は、そこまで迫って、炎に包まれる兄ちゃんや、男の子をほったらかして、逃げるほかのうて.......おれは振り返りもせんと、どんどん走っていって.......泣き叫ぶ声があっちでもこっちでも聞こえて.......走って逃げながら「カラフト伯父さん、カラフト伯父さん、助けてください」「カラフト伯父さん、カラフト伯父さん『ほんたうのさいわひ』はどこですか」「カラフト伯父さん、カラフト伯父さん、来てください」.......呪文みたいに、あんたの名前、何べんも何べんも呼び続けて.......。

仮設住宅で婆ちゃんが死んで、復興住宅で爺ちゃんが死んで、ローンの残っとる家が、潰れて、もう一回、ローン組んで、二重ローンで、朝の六時から夜の十二時まで働くしかなかった親父が死んで.......つぎからつぎに、かなしみが襲うてきて.......つぎからつぎに、くるしみが襲うてきて.......。

夜になると、あのときの、地震のときの声が聞こえてきて.......「もう行け、もう行け」「はよ逃げてくれ、はよ逃げてくれ」.......眠れんで.......ちょっと揺れたりすると、毛布にくるまって、恐怖でがたがた震えて.......朝になるまで、、あのとき、生き残った自分、責めて.......あのとき、死んでしもたらよかった。おれがかわりに、死んだらよかった.......かなしさと、くるしさと、恐ろしさと、痛みと.......なんもかんもが、ぐちゃぐちゃになって、なんもかんもが、ぐるぐる頭回って.......眠れんで.......息もでけんぐらい、生きることがつろうて.......。

そのたんび、おれは.......「カラフト伯父さん、カラフト伯父さん、助けてください!」「カラフト伯父さん、カラフト伯父さん『ほんたうのさいわひ』はどこですか!」「カラフト伯父さん、カラフト伯父さん、来てください!」「カラフト伯父さん、カラフト伯父さん、助けに来てください!いますぐ、来てください!」.......。

ずっとずっと叫び続けたんや.......ずっとずっと、あんたが来てくれるのを、待ち続けてたんや.......。


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